2011/12/13

中庸から伸びるふたつの道

アドリブを勉強する時の話。

僕がその昔、バークリー音楽院で学んだ頃アドリブをするにはスケールをマスターしろと習った。
何かのコードがあった場合、そのコードに対して使える音は常に7音あると。
その7つの音を組み合わせて自由にアドリブメロディを作曲する。
これがAvailable Note Scaleという考え方だ。
(モードと混同して教えられる場合も多く、そのせいで更に混乱を生んでいる)
しかしながらChord Toneである4音にNon Chord Toneである3音を加えたDiatonic Scaleは無作為に組み合わせるとChordalな響きを生み出さない。
よってコード感を言い当てていないアドリブメロディが量産され、それをかっこよく機能させるためにPhraseというコンセプトに置き換えられている。

以上のメソッドではかっこ良いフレーズは飛び出すもののNoteそれ自体をコントロールすることができない。
9thをPassing NoteやDiatonic Scaleに取り込まれた2度としてではなく「9th」として響かせるためには違うコンセプトが必要だ。
そのために大事なのはアルペジオだろう。

Chord Toneをそのまま組み合わせてフレージングするArpeggioというコンセプト。
むろんChordalに響く。
なにせコードトーンしか弾いていないからだ。
ちゃんとコードらしさを言い当て、その先に更に音を積み重ねて修飾してゆくことでノートをコントロールしながら流麗なメロディを生み出すことができる。

なのでアドリブにおいて最初に学ぶべきコンセプトはアルペジオであるべきと僕は思う。

そしてもうひとつ大事なこと。
4音のArpeggioをマスターした先で7音のDiatonic Scaleの方に進むだけでなく、音を刈り込んで少なくしてゆく方向も進化と捉えること。
つい音の選択肢を増やすことやScale Outに憧れる人は多いと思う。
でも3音のTriadや2音のGuide Tone Lineなどは贅肉を極限まで削ぎ落とした緊張感をアドリブラインに与えてくれる。
むしろこちらの方が音数を増やすことよりも難しいコンセプトだと思う。

最初に学ぶべきことは「中庸」。
そこに軸足をおいて、それよりも大きな世界と小さな世界のいずれに向かっても冒険してゆく。
「基本<拡大<拡大」という構図ではなく、
「縮小>基本<拡大」という構図を思い描き、そのいずれの方向へもProgressしてゆくことが学ぶ時に大事になってくると思う。
だからこそどこに「Normal」があるのかを見抜く直感力を養わなくてはならない。