2012/01/17

新しい音楽を模索するための道

ここ数年音楽ソフトの売り上げが下がっているというニュースが毎年更新されている。
そしてその度に原因はインターネットでのダウンロードビジネスの台頭や、ファイル交換ソフト利用の増加とアナライズされてきたが果たしてそうであろうか?
確かにそれは大きな要因だと思うがその部分だけクローズアップされることで音楽それ自体の魅力が低下しているという問題について見過ごされていると思う。
そう、音楽の進化はこの何年間もまったく止まってしまっている。
ビートルズやジャズがそうであったように今一度音楽には根本的なイノベーションが必要なのではないだろうか。

新しい音楽はクロスオーバーすることで生まれると思う。
過去のイノベーティブな音楽もそうやって生まれてきた。
アフリカのリズムとコードのクロスオーバーによってブルースが生まれ、祈りの言葉とクロスしてゴスペルが生まれた。
カントリーとブルースがクロスしてロックンロールになり、ジャズの響きとラテンのリズムのクロスからボサノヴァが誕生した。
だからイノベーティブな音楽を見つける手段はクロスオーバーしかないと思う。

ここ何年も音楽はテクノロジーとクロスオーバーしてきた。
電子ドラムとクロスした80年代の洋楽シーン、コンピューターによる速いドラミングとクロスしたジャングルと新しい音楽は誕生した。
当時はそれでもイノベーティブであったと思うがコンピューターの先進性が失われ一般化した今においてテクノロジーによる音楽のイノベーションは起こり得ないと思う。
コンピューターはすでに成熟し活発な新陳代謝の時代は終わっている。

このような時代背景においてミュージシャンは何年間も音楽それ自体と取り組んでこなかった。
そのかわり最新のテクノロジーに取り組み、そこにのみ活路を見出そうとしてきた。
新しいコード進行やメロディ、コンピューターには再現できない揺らぐグルーヴなどの研究開発など本来の"音楽"家としての仕事を放棄してきた。
これは自分も含めた音楽家たちの怠慢であると自戒する。
その結果が現在の音楽文化の停滞を招き、音楽文化の地盤沈下につながっている。
マーケットはそれを正直に写し出す鏡でしかない。

テクノロジーがなかった時代にビートルズは新しい音楽を見事に作り上げた。
そこにあった道具はそれまでのミュージシャンが使っていたものと全く変わらない普通のドラムに普通のベース、ギター、そして歌声だった。
しかし彼らの音楽にはインド音楽から影響を受けたと思われる新しいコード進行があふれていた。
西洋のアイオニアンスケールで描かれる音楽に突然挿入されるインドのミクソリディアン音階。
bVIImaj7thという見たことのないコードによるModal Interchange。
そう、ビートルズはテクノロジーなどに依存せずともイノベーションを成し遂げた。

テクノロジーによる音楽イノベーションが行き詰まった今、音楽家がもう一度ビートルズのようにコードやメロディと取り組むことができればイノベーティブな音楽と出会えるかもしれない。
その時音楽はふたたび魅力的なものになれるかもしれない。
そう信じて、今日もギターを手に音楽理論と向き合おうと思う。