2013/02/28

良い音を生み出す平均化装置。

レコーディングに盛り上がっているここ最近のAcousphere Studio。
弟子たちともミックスやマスタリング、アレンジの話に花が咲く。
その中でよくでてくるワード「良い音」。
だがなかなか定義がはっきりしないと思う。
個人の主観できまるものだろうと思っている人もいると思うので否定はできないが、
絶対的に良い音があるとすればそれは「フラット」な音色だと僕は思う。

なぜフラットな音色がイコール良い音かというと、その状態だと演奏の全ての情報が伝わるからだ。
たとえばギターの場合、でてくる音色は多種多様でベースのように低い音から女性ボーカルのファルセットのような高い音まで出る。
シンバルのような更に高い音も出るし、音程に感じない空気圧そのものの音も出ている。
それら全ての成分が聞く人に届く状態をフラットと言う。
もしも何かの成分が大きくて何かが小さいと演奏の全てが伝達されない。
たとえばメロディはよく聞こえてくるけれどベース音が聞き取れなくて不安定に聞こえる、なんていう状態が起こる。
演奏の良し悪しではなくEQひとつでそうなってしまうのが怖いところ。
言い換えればEQひとつでその演奏トラックを良くも悪くもできるということだ。

しかしフラットな設定にすることができればまずは安心だ。
なぜなら全ての成分がちゃんと届いているからだ。
そしてそういうフラットな音色設定はフィードバックにも強く、ステージでも重宝する。

レコーディング作品を作っている間のEQでは、音源にあわせてフラットを崩すことも時折あるが、それでもまずフラット化する所からはじまる。
そのくらいフラットな設定というのは大切で、基本、礎になる状態だと思うし、そして最上の音色の状態でもあると思う。

そういえばEQ、つまりイコライジングは英語で書くとEqualizingとなる。
意味は「Equal=等しい」「ing=状態にする」となる。
イコライジングは音色補正ではなく「平均化」が正しい。
イコライザーは「音色平均化装置」という名称だ。
あえて日本語で堅苦しく呼ぶことで、本来の目的とその状態を目指すことの大切さを教えてくれるかもしれない。

平均化したらギター毎の音色の差がなくなってしまうのでは?と聞かれたこともあるがそれはない。
それぞれの違った音色のギターを平均化するのだから持ち味はなくならない。
かえって平均化することで個体差がはっきりと浮かび上がってくる。
そのギターだけがもつ固有の響きも含めて、全ての情報がさらされるからだ。