2013/06/30

歌わないアドリブ法

ギターを長年弾いてきたがそんな僕でさえアドリブをとるのは難しいと思ってきた。
コード進行に沿って美しいアドリブメロディを即興で作曲し瞬時に演奏する。
いやあ、そんな複雑な事をやってのけるのは無理だろうと。
では長いこと演奏して、勉強を続けてきたらできるようになるのか。
答えは「No」だ。
先に説明したようなフローを完璧にこなすことは不可能だ。

アドリブが上手なプレイヤーは違った方法論でアドリブに挑んでいるのではないか?という疑問を持ち始めたのは2年ほど前、Tuck Andressさんとアドリブ法について話し合っていた時だ。
Tuckさんは4Noteのアルペジオよりも3Noteのトライアドによるアドリブ法の有用性を語っておられた。
コード進行通りにそのトライアドを用いる方法と同時に、拡張して他のトライアドを対比させる方法、最終的にはTension Noteだけで構成されるUpper Structure Triadに関しても言及されていて、その場で演奏してみせてくれた。
アイデアに富んだ素晴らしいフレージングが無尽蔵にその場で生み出されるのをみせてもらった。
それを弾くTuck Andressさんはメロディを考え込んだり目を閉じて集中したりしない。
ずっと僕の顔をみながら手元だけが「オートパイロット」で演奏していた。
その事が僕にとっては一番の衝撃だった。
頭で作曲しないで方法論だけで弾いていても素晴らしいメロディが生まれる事を知った。

それから1年間アドリブの新しい考え方について研究をはじめた。
アドリブ奏者には「歌う派」と「歌わない派」がいることを発見した(演奏が歌ってるとか歌ってないとかの話ではなくアイデアの源泉がどちらかという事)。
今まで気づくことのなかった「歌わない派」のフレージングを、「コンセプトの展開によって弾いているはず」という仮説の元に分析し、そのコンセプトで自分も演奏に挑むようにして実証実験を繰り返してきた。
仮説は僕の中においては実証され、「歌わない派」の感覚をようやく取り込むことができた。
そして今、人生で一番アドリブが楽しめるようになってきた。

「歌わないアドリブ法」という考え方がアドリブ克服に悩むたくさんの演奏者達、とりわけギタリスト達の助けになると思う。
自身のギター教室を通じてこの考え方を広げてゆきたい。