2013/07/17

Acousphereマスタリングテクニックを説明します!


Acousphere奥沢です!
さて、さっそく僕のマスタリングにおけるテクニックのひとつを説明したいと思います!
今回のテーマは「リスニング環境をかえることの大切さとコンセプト」です。

マスタリングとはミックスを終えた各音源をひとつのCDアルバムに収録するために、
音量を揃えたり音色補正をしたりする作業をいいます。
この作業によって最終的な音、クオリティが決まり、
それがそのままリスナーのみなさんに届く訳です。
なので、もっとも気を使うたいへんな作業になります。

僕の作業の手順を時系列順にならべながら説明します。

「音量を揃える。リファレンス音源と比較する」
音色補正など行う前にまずは音量を適正にします。
適正音量というのは実は指標が曖昧ですが、
僕の場合は憧れのアーティストのCDをリファレンスにしています。
そのCDから音源を取り込んで、マスタリングプロジェクトに入れ、
自分の作品と交互に聞き比べしながら音量を調整します。
聞き所は以下の三つです。

・低音、ベース音が同じ音圧になってるか。
・メロディが同じ音量で聞こえてるか。
・全体の音圧が同じようになっているか。

「リファレンス音源の質感に近づける音色補正をする」
前述しましたリファレンス音源を聞きながら自分の音源と比較して、
音を似せて行く作業を行います。
闇雲に好きな音色を目指して作業をしても指標がないと「好み」に陥ってしまいます。
そうならない為にバランスの良い音源をお手本にしながら、
まずはそれに近いものを目指してゆくという事ですね。
役に立つのはレコーディングソフトに入っている周波数のアナライザーです。
いまどの周波数の音がどのくらい出ているのか可視化してくれる機能で、
このスペクトラムのカーブを見比べて似せてゆくこともできます。

「リファレンスに近づいたら振り返って考察する」
お手本に近づけてゆく作業を終えた音源はバランスよくなります。
全ての周波数が過不足なくきれいに鳴っている状態に僕の場合はなりますが、
と同時に本来のその音源の特色だったサウンドも弱くなってしまいます。
簡単に説明すると新製品のギターの音も、古いビンテージギターの音も似てしまうということです。
これでは音源本来の魅力をひきだしているとは言えないと思っています。
その場合は補正作業で行ったイコライジングの値を元の音源に戻すように
値を緩めてゆくという作業を僕は行います。
何かの数値を10に増やしていたら、5まで戻して聞いてみる、ということですね。
するとクオリティが高いまま、元の音源の良さが出てくる、バランスの良い数値が見つかってきます。

「環境をかえて聞いてみる」
スタジオのスピーカーで良い音で鳴っていても違うスピーカーや場所で、
同じように良い音で再生されるかはわかりません。
スピーカーの大小でも違いますし、場所によっても聞こえ方はまちまち。
音楽作品はいろんな場所でつかわれるものですから大切になのは
「どの再生環境でも平均的に同じように再生される」ということですね。
それを感じる為にできあがった音源とMac Bookを持って、
以下のような環境に移動して僕は何度も聞き直しています。
・スタジオにあるモニタリングヘッドホン2種類でリスニング。
 ヘッドホンユーザーへの聞こえ方をチェック。
・スタジオ内の違ったスピーカー2つでリスニング。
 精密なスピーカーと家庭用スピーカーでチェック。
・Acousphere Cafeの店内放送用スピーカーでリスニング。
 壁が吸音されてない場所での聞こえ方をチェック。
・ドライブ中の車内でリスニング。

  「最後にCD-Rに焼いてみて再生デッキでチェック」
最近はiTunesなどを通して流通することが多い音楽ソフトですが、
CDという形で届けるというのは大事な事だと思っています。
ですので、そのフォーマットにした状態で最後はチェックです。
メディアの形がかわることでも音はかわってきますので、
とにかく様々な視点から複数回チェックするのが大切です。

いかがでしょうか?
一口に「マスタリングは最後に音を良くする作業」と言いますが、
音を良くしてゆくためには膨大なチェックポイントを複数回行うことが大事なんですね。
マスタリングは目標とする事象やいじるパラメーターは少なくとも、
タスクはレコーディング作業の中で一番多くて繊細な作業です。
これができるようになれば演奏家の人も楽器の聞こえ方、扱い方までもかわってきます。
Tuck&Pattiさんのようなハイエンドミュージシャンを目指す人は、
是非このテクニック、スキルを習得できるようがんばってみてください!