2013/07/04

僕のレコーディングの手順を説明します!

Acousphere奥沢です。
ただいま僕はレコーディング作品を作る作業をしています。
このサイトを見てくださる人の中にも自分の音楽作品をレコーディングしたい、そしてYouTubeやiTunesを通してたくさんの人に聞いてほしいと思っている方がいるのではないでしょうか。
でもレコーディング作業なんてどうやっていいのか、何が必要でどんな手順なのか見当もつかないかもしれません。
確かに非常に長い作業工程が必要になるんですが、今回はなるべくシンプルにどのような工程でできあがってゆくのかを時系列順に説明してゆきたいと思います。
みなさんのレコーディングや音源リリースのお力になれればと思います!

「下準備」
ものすごく当たり前の事ではありますが、まずレコーディングする曲の準備をしないといけません。
編曲も練習もしないでいきなりレコーディングはできませんよね。
僕の場合はこの段階で以下のようなチェックポイントを気にかけています。
・どんな楽曲を題材にするのか、作曲するのか考える。
・どのようなアレンジを加えたら自分らしい、新しい音源になるか考える。
・その曲を通してどういうメッセージを伝えたいのか考える。
・アレンジする上、演奏する上で自分にとって新しい理論やテクニックを入れる。
・とにかくたくさん練習してレコーディングに備える。

「プリプロを作る」
プリプロとはPre Productionの略で、本当のレコーディングに入る前に録音するアイデアをスケッチしたような音源の事をいいます。
演奏は粗くてもいいですし、音色もきれいでなくて構いません。
とにかく頭のなかにあるアイデアを現実に音楽作品として仮組してみて、リスナーとして客観的に判断します。
この作業の中でアレンジの無理など問題点が浮かび上がってきたり、またアレンジの面白い所、新しいアイデアなどに出会えたりします。
本番のレコーディングよりもクリエイティビティの根幹に関わる最も大事な工程がこのプリプロ制作だと僕は思います。
弟子の音源をプロデュースするときもこの段階から関わるようにしていますし、一番時間がかかり根気がいる作業なんですね。

「集音」
いよいよ本番です!
この作業からは実はあまり大変ではなくなってきます。
プリプロを作る段階でどんな演奏をするべきかはハッキリしていますし、練習も十分できていますよね。
集音作業でのポイントは「良い音を録る」という事に尽きます!
良い音のチェックポイントは以下になります。
・大きい音量で録れていてノイズが少ない音。
・楽器や歌声に無理な負担のかかっていない伸びやかな音。
・予期せぬ楽器や録音部屋のハーモニクス成分のない音。
・優れたイントネーション、アーティキュレーションで演奏されている音。
・楽曲やリズムを正確に捉えた上で自分の解釈を加えた音色とリズミックアプローチ。
・心のこもった演奏の音。

「トラックダウン」
集音した全ての音をひとつの音楽としてまとめあげてゆく作業がこのトラックダウン、通称TD(ティーディー)です。
通常楽器の音を録音して音量を揃えるだけでは作品は完成しません。
演奏内容が聞こえやすくしたり、リスナーに聞きやすくするためには音にお化粧を施さなくてはならないのです。
しかもしの作業をスタジオにこもって一人で自問自答しながら繰り返してゆくので、ある意味このTDが一番骨が折れる作業かもしれませんね。 TDで僕が行う作業を手順にそって箇条書きします。
・音源をEQでフラット化する。聴覚で確認するのが基本だが周波数アナライザーやRefference音源のEQカーブと見比べたり多角的に分析する。
・コンプレッションをかけて演奏を聴きやすくコントロールする。かけない音源もある。
・リバーブを音源毎に適量と思う量だけかけてゆく。この段階では全体像は考えない。
・リバーブ音自体に対するEQもしておく。Low FilterとHigh Filter。
・個別に音色補正が完成した音源をミックスしてゆく。音量調整とPan設定。
・ヘッドホンでモニターして音圧が左右の耳均等にかかるようにする。
・Two Mix状態のファイルに書き出す。このときに16bit44.1kHzにコンバートする。

「エディティング」
TDを終えるとようやく「演奏」から「作品」へと音源が変化します。
同時にそれまではうまく絡み合っていた演奏の聞こえ方も変わり、補正が必要になってきます。
そこで必要になるのがこのEditingです。
音源毎に再生のタイミングを調整したり、あっていないピッチを補正したりします。
この作業も音源をより素晴らしいものに仕上げて行くのに大きな役割を果たします。

「マスタリング」
解像度の高い個別の再生であったプロジェクトファイルを抜けて、LRにふられたTwo Mix音源に書き出したあと、その結果として出来た歪みをただす作業がマスタリングです。
基本的には若干のEQとアルバムに同時に収録される他の音源との音量調整を行います。
とても繊細な作業になりますが、この段階で補正できることには限界がありますので、大きな問題を感じた場合はTDのプロジェクトまで逆戻りします。
そういう理由もあって僕の場合はメジャーレーベルでの仕事においてもマスタリングスタジオに入る前に自分でマスタリングを終えて、その音源を提出していました。
僕の行うマスタリングの作業は以下!
・新しいLogicのプロジェクトファイルに出来た音源とRefference音源を吸い上げて比較する。
・自分が理想と思う音源と同程度の再生音量になるように音量を調整する。低い音域、高い音域、メイン楽器の音量などに留意しながら音量を揃えて行く。
・思った音量がとれない場合はLimiterやCompressorをつかう。
・EQカーブをReferenceを参考に揃えて行く。
・再度Two Mix、16bit、44.1kHzのサイズでエクスポートして終了!

いかがでしたでしょうか?
結構長い工程が必要だということがわかったと思うのですが、できるだけシンプルに説明したつもりです。
作業内容としてはこのままやれば良いだけなので、みなさんもこれらのチェックポイントに留意しながら作業を行えば音源が見違えるほどゴージャスになります。
確かにそれを遂行するには微細な音を聞き取れる高度なリスニング能力が必要になってきますし、その能力を開発するためのプログラムは別物かもしれません。
でも見よう見まねでもこの作業と向かい合い、「良い音とは何か?」という問いかけを自分に対して行う事が大事だと僕は考えます。
ハードルの高い作業ではありますが、ぜひこの記事を参考にみなさんもやってみてください!
だれでもiTunesから簡単に音楽を全世界配信できる時代ですから素晴らしい音楽を自身の手で発表していってくださいね!
もっと詳しい手順が知りたい人はAcousphere Guitar Schoolにもお越し下さい!
http://acousphereguitarschool.blogspot.jp/