2015/12/06

Wes Montgomeryオクターブ考。

この数年間、興味の対象はWes Montgomeryだ。
ジャズギターの開祖でありギターの演奏テクニックを拡張した天才。
全ジャズギタリストにとってのルーツ。

しかしながら現在のジャズギターシーンにWesを源流に持つスタイリストが見当たらない。
同じフレーズを弾きオクターブ奏法を使うギタリストはいるかもしれない。
でもそれだけでは不完全、Wesができたこと全てを同等のスピードで演奏し再現できなくてはその先も見込めない。
乗り越えずに迂回する表現者が多いことに危機感を覚えると同時に自分はその先にある感覚を理解したいと常に思う。

弟子の林本くんと共に今Wesの高速オクターブフレーズを研究し練習している。
僕はギターは弾けている方だと自認するがそれでもWesのスピードにかなわない。
筋肉量、反射神経、そういったものが原因だとするならばひたすらに練習をする以外にないけれど、それも分析を放棄していることになるし弾けば弾くほどそういったことに解答がないことに気がついてゆく。
絶対に何か考え方や感じ方が違うのだ、根本的に。

m7のコードのコードトーン、1,b3,5,b7,9と駆け上がる。
9th狙いなのはいつものWesらしい選択だ。
その全てのノートに「タララ」という発音でChromatic Approachをかける。
1-7-1, b3-2-b3, 5-b5-5, b7-6-b7, 9-b9-9, となり。
この量を180bpmくらいの楽曲の1小節の中にブチ込んでくる。
言葉は悪いが「ブッ込む」という表現がふさわしいほどに強烈なフレーズ。

この全ての音を等価で考えて弾くと絶対にスピードにおいつけない。
Chromaticの部分は装飾なのでなんとなくそう聞こえればよい。
1, b3, 5, b7, 9だけを目で追いビブラートを大きくかける要領で弾き上がる。
これがWesが見ていた世界、感覚だろう。

そこまでは見抜けたが練習するうちに小さいけれどもう一つの壁を感じている。
このまま弾いても誰もWesとの違いはわからないだろうけれど、弾くうちにわかるようになってくる違和感。
次の研究のポイントはここだろうと思うが、それが何かはまだ見当がつかない。
ここから先はとりあえずこのプレイをステージ演奏しながら長い年月かけて考えてゆくポイントかもしれない。